2025.02/vol.233
スランプは成長のチャンス
ニュースに続く特集番組だった。デビュー25周年の彼はリリースした曲が連続ヒット。その後、歌手活動を辞めようか悩む日々が続いた。きっかけは肉親や友人が続けて亡くなったこと。そこからスランプに陥り、納得できる曲が作れずにいたという。
そこで、山荘にこもることにした彼。都会では当たり前だった情報・連絡を遮断し、自然の音に包まれる生活を送った。やがて、前ぶれもなく曲が書けるようになり、2か月後に都会に戻った。
曲づくりを仕事に置き換えてみよう。ビジネスマンのスランプも自然の中に身を置けば解消できるということか、と早合点しそうだが、彼が伝えたかったことは別にあった。
飛躍の機会。
スランプがあるからもう一段上に行くことができる、チャンスでもある、と。スランプを超えるには数か月かかることも珍しくない。これにも意味がある。スランプ中はエネルギーが足りない。満ちるまで待とう。私は、スランプ越えに役立つレジリエンス(回復力、しなやかさ)は人によって「強弱がある」くらいに考えていたが、彼のインタビューを聴いて、レジリエンスも「満ちるまで待つ」ものだと考えが変わった。
以前、プロにはスランプがありアマチュアにはないと書いた。プロはアマチュアの最高の状態を常に出せる人。難題を簡単にやってのけたり、簡単なことに手間をかけて唸らせる。店が続くのは店主がプロだから。そして、好調な時ほどスランプが鎌首をもたげる、と。
コロナ禍中にスランプに陥った店主がたくさんいた。彼らと何度も対話し、心境や行動の変化を目の当たりにしてきた。皆レジリエンスを備えた方々だったと思うが、しなやかに対応し、今、ぶれずに立っている店主の共通点は、逆境に焦らず、満ちるまで待っていたということ。そして満ちたころ、文字通り満を持して行動に移したところだ。スランプのおかげで、安く売らなくても集客できるようになった、新たな仕入れ先に恵まれたという声もきく。あなたが通う店の中に前より良くなったと感じる店があったら、スランプをチャンスに変えた店主がいるかもしれない。先の歌手は山荘にこもったが、目の前の店主はどうしたのか?それとなく聞いてみるのもいいだろう。
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233スランプは成長のチャンス
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232ひとりの顧客と深く関わる
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231閉鎖商圏でも続く商い