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たかはしこうじのマーケティングスパイス

2023.05/vol.212

手間ひま省いて心を使う

文具店の店長が、小5の女子を持つ母親から「娘が文具を大切にしないので困っている」と、相談された。普段は自分(母親)が良かれと思う文具を買い与えているが、少し使うとポイッとしてしまうという。そこで店長は、過去の文具はお母さんが全部預かって、これからはお子さんに買いに来させてくださいとアドバイスした。すると、後日母親がみえて、娘が自分で買い物に行くことを嫌がったこと、それでも行かせたら品物の多さに驚き、なかなか決まらず悩んだこと、会計時の緊張、帰宅後にこれらの買い物体験を嬉々として自分(母親)に話したことを報告してくれたという。娘さんは散々思案し選んだペンと自由帳を今までになく始末良く使っていて、母親は少々反省している様子だったとも。この話で思い出したのは、前号の介護士の女性との対話だった。
彼女は、まだ企画中と前置きした上で「軽い認知症の利用者の方々の食事風景を変えたい」と、話していた。施設のお昼といえば車椅子のまま長テーブルに着き、黙々と介助者の運ぶスプーンを口に入れるのが通例だという。気がかりなのは、毎日ほぼ同じメンバー(利用者)と食べているのに全く会話がないこと。症状が軽くても少しは介助が必要だが、それが過ぎて周りとコミュニケーションをとらずに昼食が済んでしまうことに、違和感を抱いていたのだ。私たちが何人かで食事をする時は、それが学食や社食であれ、食べることより話に夢中になることがある。また、知らない人でも相席になれば、つい話してしまうこともある。本来、食事と対話は一体化し易いものだから、この風景を変えるだけでも心や身体に変化が現れるのではないか?そこで彼女は、同じ業界の人が聞いたら、それはムリ!と笑うかもしれないが、利用者の方に、あえてスプーンを渡し自ら食べることに再挑戦させたり、自ら好きなメニューを選べる日を設ければ、ひょっとしてすすんで食べるようになり、わずかでもコミュニケーションが復活するのではないかと考えたのだ。
私は、子供の買物と認知症の介助の話を聞いて、相手を思い、手間をかけ過ぎることが、相手を受け身にし、成長や感動のきっかけを削いでしまうこともある、ということにハッとさせられた。コンサル先では「手間を惜しまず」を、決まり文句にしていたが、あえて省く戦術の存在を考えさせられる事例だった。

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