2022.09/vol.204
買わなくなったお母さん
一体、何を買わなくなったのか?それは自分の服。今日は、沢山買っていた顧客がパタッと買わなくなったという話だが、その理由や店の対応をふり返ってみよう。
水産業の盛んな人口2万人の街に、ご夫婦で営む婦人服店がある。店主夫人から「いつもの人が来ない」と、相談されたのは昨年5月末。いつもの人とは、50代前半の顧客。DMへの反応が早く、必ず1~2着買う方だった。その彼女が3月以降、顔を見せていない。身体の具合でも悪いのか?と、心配したがDMは出し続けることにした。
事態が動いたのは今年の2月。久しぶりに先の顧客が顔を見せてくれた。思わず「心配していました」と、店主が駆け寄ると、「娘の受験で忙しくて」と、彼女。聞けば、娘さんが音楽大学受験で塾や音楽教室に通い始め、週に4日(回)送迎をかって出るなど、娘さん中心の生活だったと言う。どうりで来店できないわけだ。応援の甲斐あって合格し、普段の生活に戻っての来店だった。
さて、このエピソードから店主のあなたは何を思うだろう?顔を見せない顧客にも、DMは送り続けるべきと再確認した方。馴染み客なら悩んで待つより手紙やメールを送ればいいという方。中には、顧客が店に来ない(買わない)理由は様々だと再確認した方もいるかもしれない。顧客がパッタリ来なくなると、自店に厳しい店主ほど何か落ち度があったのでは?競合店に押されたか?と、考えがち。これは謙虚で慎重な思考だが、先の顧客のように受験を控えた子供がいるとわかれば別な理由も浮かんでくる。
足が遠のいた一番の原因は、受験のことが頭から離れず精神的に余裕がなかったことだろう。以前、進学を機に子供部屋をリフォームするので父親の新車購入が見送られた事例があった。これは単純に異業種間競合で予算の問題だが、買わなくなる理由は多岐に渡ることを確認しておこう。
このように生活者のライフステージによって心模様が変化し購買行動が変わるわけだが、こうした時期を経て急速に買い物熱が冷める顧客と、逆に反動で堰を切ったように買いまくる顧客、双方がいることも忘れてはならない。先の受験一段落というタイミングの顧客は後者予備軍の可能性が高い。すると、顧客台帳に子育て期間などの情報を記しておけば、ねぎらい、自分へのご褒美、あの頃の自分、大人買いなど、いつもと違う個別販促の切り口・商品も浮かんでくるだろう。
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