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たかはしこうじのマーケティングスパイス

2022.05/vol.200

避雷針店主

コンサルティング先の店主の接客を見ていると、その極意に気づくことがある。今日は、店主一人で経営する化粧品店でのエピソードを紹介しよう。ちなみに前回とは異なる店で、キーワードは「避雷針」だ。
この店は中山間地の人口8千人の街にある。お昼過ぎに店にうかがうと、女性店主はカウンター越しに接客中だった。お相手は年配の女性顧客。いったん話を止めたが、私が壁一枚隔てた控室に入ってしばらくすると、声が聞こえてきた。やがて、語気が強まりイラついているのが伝わってきた。どうやら家族の誰かに不満があるらしく、そのうっぷんを晴らしているようだ。ところが、この間、店主の声がほとんど聞こえてこない。あれっ、居るのかな?と心配になり壁の向こうに意識を向けると、時折相づちが聞こえて安心した。やがて「ありがとうございました」と、椅子が動いたのは30分後だった。
奥に入ってきた店主に、お疲れ様でした、と声をかけると「お待たせしました、でも今日は短い方なんですよ」と、意外にもすっきりした表情で疲れがみえない。いつもの顧客とはいえ、あれだけ発散されたら、げんなりするだろうにと思った私が「さすがですね」と、返すと「避雷針ですから」と、店主。ここからは彼女の話だが、最初はお客様の話を理解するのに一所懸命過ぎて、余計なことまで質問しアドバイスしていたので、とても疲れたという。ところが、自分のアドバイスが的を射ることは少なく、かえってお客様の機嫌を損ねてしまったこともあった。そこで、質問や意見を控えて、愚痴なら愚痴をしっかり聞いて受け止めたら、意見することなく避雷針みたいに流し、留めておかないようにした。すると、お互いにスッキリするというか、後を引かなくなったという。
なるほど、お客様の話に一所懸命になるほど、何とかしてあげたい、何かアドバイスしなければ、と積極的に質問もしたくなるが、これが逆効果になる、と。接客の教科書には、お客様の話には積極的に関わるようにと記されていることが多い。でも、関わろうとする気持ちは、言葉以外の頷きや相づち、しぐさ、表情でも伝わる。彼女が言いたかったのは、言葉だけで解決しようとせずに、こうした言葉以外のことに感情をこめること、そして、お客様自身が納得するまで待つことが大事、ということなのではないか。

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