2018.12/vol.161
やさしさを売り込む人
順番票を引き抜いてすぐにカウンターに呼ばれた。給与日なのに空いているのは今年初の爆弾低気圧のせい。待ち時間に雑誌を開くと「やさしさを売り込む人」という一節が目にとまった。ここは銀行。高齢者を狙う詐欺のことだと思い、読み進めると、意外にも親子関係・育児を説く記事だった。
記憶に残ったフレーズが3つある。①子供を笑わせることと笑われることは違う②優しい言葉や物をおごるなど、見える行為をする人は優しさを売り込む人③優しい人は見えないところをきちんとしている。うろ覚えなところもあるが、こうして書き出してみると親と子だけでなく店とお客様の関係にも当てはまりそうだ。
先述の②に関する事例も興味深かった。それは、親が子供の好きなおかずを「これ好きでしょ、たくさん食べて」と差出した時のこと。子供は首をかしげて箸をつけない。親は「どうして食べないの?好きだって言うから作ったのに!もういい、私食べるから」と皿を取り返してしまう。母親の気持ちもわかるが、紙面では次のように説いていた。子供の好きなおかずを作るという行為は優しい。でも「あなたのためにしてあげたのに」という説明が要る行為は見た目は優しくても、心が優しいとは言えない。甘えた親は常に子供から「ありがとう」が欲しい。それは子供に恩を着せる優しさだという。
親を店に、子供をお客様に置き換えて接客場面を想像してみた。顧客好みの商品を準備したにもかかわらず、反応が芳しくなかった経験はないだろうか。その反応を素直に受け止めるか「あなたのためにしてあげたのに」と心でつぶやく(恩を着せる)かで、接客の余韻に差が生まれることは言うまでもない。
ところで、注意すべき客層、お客様は誰だろう?強いてあげるなら、店に慣れてきたお客様だ。当然、彼らに対しては従業員も良かれと思ってサービスする機会が増える。すると、当てが外れる場合も考えられる。今までの好印象が崩れることのないよう、次の繁忙期に入る前に、接客のあり方を全店で再確認してはどうか。
(平成30年2月16日執筆)
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