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たかはしこうじのマーケティングスパイス

2019.11/vol.171

需要は違和感に宿る

人口6千人の山間地に3代続く鮮魚店がある。昭和19年生まれの店主は購買データを踏まえたバースデーDMを出し続けている。また、新聞折込チラシも月1回書き、店を知らない方へのアピールも怠らない。こうしたアナログ販促が功を奏してきたが、ここにきて新規客が伸び悩み。定番販促の限界?と考えたが腑に落ちない。彼は販促から商品に視点を移し伸びしろの大きな惣菜部門に新商品を投入すると、客数が回復しはじめた。その新商品はヒレカツだった。

ヒレカツは珍しくない惣菜だが街のミニスーパーでは投入を見合わせるアイテムだった。おそらくハンバーグやロースカツより高価で、お客様が受け入れ難いと考えたのだろう。彼はそれを逆手に取り原価をしっかりとかけ、既存の魚総菜に引けをとらない商品に育てようと努めた。鮮魚店がヒレカツ⁇違和感を抱く方も多いだろう。実はこの違和感が貴重だ。回転寿司のラーメン、カレー、スイーツを思い出してほしい。耳にした時は違和感を抱いてもカウンターに座れば「こんなの欲しかった‼」と手が伸びる。それまでの違和感が好印象に転換する瞬間だ。これが「需要の創造」であり、店主が勇気を出して提案した時のみ実現する。

ところで、先の店主も最初から違和感に抵抗が無かったわけではない。違和感を頭ごなしに否定しなかったのは、固定観念や成功体験の枠から出ておきたかったから。彼は狭小店舗を継いでから刺身や干物など、いかにも鮮魚店という内食を提案してきたが、やがて壁に突き当たる。その後、自宅に作業場を設け惣菜や弁当に着手した。この時も、魚屋が弁当を?と最初は違和感を抱いたが頭ごなしに否定しなかった。そして今、地元の中食市場に一石を投じようと密かに考えていたヒレカツに挑戦したのだ。

需要に応えれば売れるというが、店に対して「こんなの欲しい」を明確に伝えることができる生活者は少ない。実際、この街でも鮮魚店にヒレカツをリクエストするお客様はゼロだった。繰返すが、需要の創造は違和感を抱いた店主の勇気ある提案が鍵だ。違和感の中には好印象に転換するものがあり、そこに需要が宿るとすれば、あなたの違和感の受け止め方も変わるのではないか。

(2019年2月20日)

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