2019.10/vol.170
人育ては本気度で決まる
女性従業員5人でネイルや脱毛などの施術を行う複合サロンでは、施術研修などのいわゆる「学びの出張」を従業員から店主への自己申告制にしている。注目は判断方法。出張するには店主だけでなく従業員全員の賛成が必要だという。皆に支持された従業員は使命感と優越感を抱く。店に戻ると全員で学びを共有するわけだが、これが「次は私も」という学びの連鎖を生むという。
次は従業員3人のサロン。こちらの店も学びの出張は自己申告制だが、視察先の選択にはルールがある。それは同業種より異業種を優先すること。
ある従業員は2泊3日の講座を受講した際、2日目の宿に視察先として1泊2万円ほどのホテルを選んだ。店に戻ってすぐのミーティングでは、感動冷めやらぬ彼女からホテルマンの立ち居振る舞いや上質なリネンの報告があった。これを受けて、後日タオルのグレードを引き上げたという。しばらくして60代のお客様から「おたくのスタッフは礼儀正しい」と店主が褒められた。先の従業員がお客様の控室の扉を3回ノックしてから声をかけたことに感動したという。このお客様は外国映画をよく見ていたので、ノックの使い分けを知っていたのだ。本人に聞くと先の視察先のホテルで部屋の扉を4回ノックされたことが気になり調べたという。するとビジネスは4回、プライベートは3回、トイレは2回ノックだが、日本ではビジネスも3回で済ませる人が多いとわかり実践したとのこと。この話を皆ミーティングで話すと皆のノックが変わったことは言うまでもない。
ここまで読むと、事例のサロンは積極的で物おじしない女性を採用していると感じたかもしれないが、実際は中途採用の20代女性が多く、初めは消極的だ。彼女たちの積極性を目覚めさせたのは?それは店主の人育てに対する本気度だろう。2つのサロンとも店主は受講や視察をほとんど断らない。ハズレの匂いがしてもゴーサイン。それは、どんな出張先にも必ず長所があり、それに気づくことが最大の学びと考えているから。先のノックのエピソードだが、宿泊経験豊かな女性店主は「ノックの回数なんて全く気にならなかった」という。気づきの感度は人それぞれ。彼女の「私も負けていられない」という言葉が印象的だった。
(2019年3月1日執筆)
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