2019.06/vol.166
名前を付けると動き出す
JRの駅から1時間ほど離れた住宅地にあるラーメン店から、小上がりの壁際にカウンター席を造りたいと相談があった。
混み合う曜日・時間帯でもテーブルでの相席をすすめなかった店主に「これで回転が良くなりますね」と、賛成すると「回転も大事だけど、おひとり様も大事にしないとね」と、気になる言葉を返してきた。
同席していた奥様は、前々からカウンターを望んでいたが、頑として譲らなかった店主。理由は、1人客であってもテーブル席に案内することが喜ばれると考えていたから。
その気持ちに変化が起きたのは『おひとりさま』という言葉が流行したころ。たまたまテーブル席に案内した、1人客を観察した時だった。彼の予想に反し、その1人客は周囲に気を使っていることがわかった。これを機に、1人でも気兼ねなく食事ができるカウンター席の設置を決意したという。
繰り返すが、店主に一人客への感情移入を促したのは『おひとりさま』という平易な言葉だった。言葉自体は昔からあるが『おひとり様の…』と名前を付け様々な業種で商品やサービスが提案されたことで購買が盛り上がったことは記憶に新しい。名前を付けると言えば、お付き合い先の石材店では『墓じまい』、造園業は『庭じまい』宝石店は『お受験パール』を提案しいずれも好調だった。
ところで、従業員を動かすために仕事や役割に名前を付けるのもおススメだ。お付合い先の従業員4人のインテリアショップでは前からあったミーティングに「顧客満足創造委員会」と名前を付け、接遇のケーススタディを定期的に開催中だ。親子3人で経営する化粧品と婦人服の店は晩秋に「ウォームビズ対策本部」と銘打った窓口をつくり冬季の販促チラシ中に明記した。両店とも働き手の責任感が強くなったと報告がある。名前を付けただけで?と思うかもしれないが、役職が付くと責任感が増すように、目に見えない意識の変化があるのだろう。
あなたの店でも思い当たる商品やサービス・役割があれば、名前を付けて再定義してはどうか。うまくいくコツは、誰もが知っている平易な言葉を連ねること。既存商品や組織の活性化に一役買ってくれるかもしれない。
(平成30年2月23日執筆)
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