2025.08/vol.077
お盆のはじまりはインドからでした!
夏の夕暮れ。どこからか香るお線香の匂い。耳をすませば、遠くで蝉の声が響く。そんな静かな空気の中で、自然と手を合わせたくなる…。目をつぶるとそんな景色が見えてくるのが「お盆」という日本の夏に根づく先祖の霊を迎える時間です。
お盆のルーツは、遥か2500年前の仏教にあります。あるとき、お釈迦様の弟子である目連尊者が、餓鬼道に落ちてしまった亡き母の霊を救うために供養を行ったことが由来とされています。その後、先祖の霊を供養することが「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と呼ばれる仏教行事となり、中国を経て、飛鳥時代の日本に伝わりました。
そして日本では、古来より信じられてきた「祖霊信仰」と結びつき、単なる仏教行事にとどまらず、「ご先祖さまを迎え、共に過ごす」という日本独自の精神文化へと発展していきます。
お盆とは、亡き人を悼むだけでなく、今、自身がここに生きていることへの感謝を静かにかみしめる時間でもあります。日々に追われる現代の暮らしの中で、ふと立ち止まるように訪れるこの行事は、忘れかけていた“目には見えない絆”を、そっと思い出させてくれます。