2026.01/vol.244
声で伝わる人の良さ
一所懸命な声の主に会いに行きたくなった。
それは中古車販売店の店主。彼の店まで往復600㎞弱。購入した車は陸送してもらうつもりだったが、電話で話すうちに会いたくなり、往路は下取り車、復路は購入した車で自走することにした。このコラムでスポーツに疎い母がワールドカップサッカーをラジオ観戦(聴戦)し、ファンになったことを書いたことがある。丁寧に解説するアナウンサーの「声」が、サッカー初心者の心を動かしたのだから、彼の熱意は相当なものだ。
さて、車をとりに行った話だが、この店主の熱意も半端ではない。それを感じたのは電話の「声」だった。商談の始まりこそメールだったが、その後のやりとりの9割を電話が占めた。写真では伝わらないところを繰返し説明する声から一所懸命さが伝わってくる。また、電話だと声の感じで察しがつき、不安を先延ばしせずに商談をすすめられたのもよかった。特に印象的だったのは、最後まで聞いてから言葉を選んで応えてくれたこと。人の良さは、話が通じにくいときにあらわれやすいもので、こちらが言葉に詰まると、沈黙をおそれず、待っていてくれた彼。日本人でも難しい「間」のとり方を会得しているようにも思えた。対応が紋切型でそっけない印象を与える店が多い中、最初からすでに購入決定したような嬉しそうな声で応答してくれたことも好印象。クチコミ欄を見たのは購入決定後だったが、誠実、真面目、親切、丁寧とうなづける評価が並んでいた。
それにしても9割電話?と感じるだろう。実は電話を選ぶ理由は店主の日本語力にあった。彼は来日して35年。会話は堪能だが、書くことは対話ほど得意ではなかった。そのおかげで彼の一所懸命さに気づき、信頼するようになった。もし電話中心のやり取りでなければ他店で購入していたと思う。
今日伝えたいことは、働く人の良さが伝わる切り口で商談しませんか、ということ。商談は、声まめ(電話)、筆まめ(手紙やメール)、足まめ(対面)と、複数の切り口がある。先の中古車販売店なら筆まめ1、声まめ9でうまくいっている。貴店はどうだろう?人の良さが伝わる切り口を選択すれば、自ずと付き合い易いお客様に絞られる。客数よりも客層が、とお悩みの店主ならば一考の価値ありではないか。

