2025.03/vol.234
なにを言うかより、どんな気持ちで言うか
貴店の接客に役立つかもしれない。同タイトルの197号(あらかると421に掲載)と読み比べてみよう。
前回はデビュー25周年の歌手のインタヴューで気づいたことを書いたが、今日は50周年の女性歌手。インタヴューの中盤で、彼女の代表曲の一節「さよならあなた 私は帰ります」を例に挙げ、数えきれないほど歌ってきたこの曲を「演じ分けている」と応えていた。歌詞をなぞれば、別れの情景が浮かぶ。そのまま演じるなら、もう、決めたのだから「ひきとめても、無駄よ」と歌うだろう。また、それとは逆に「ひきとめてほしい、本当は」という気持ちで歌えば、先のそれとは異なる情景が浮かんでくる。
推測だが、この演じ分けは、ご自身の心模様で決めることもあろうが、多くはステージに立ち観客の雰囲気を感じ取り、感情移入するのではないか。
さて、宝石店の接客場面を想像してみよう。婚約をすませ、指輪を買いに来たカップルに感情移入してみる。「今、本当にお幸せですね」と声をかけるとしたら、いくつかの演じ分けが思い浮かぶ。たとえば、初婚のカップルと再婚のカップル。前者に対する「今、本当にお幸せですね!」は入社3ヶ月の、20代前半、未婚のスタッフでも何とかなりそうだ。後者はどうだろう。
(おふたりとも、いろいろあったと思いますが)と言わずとも、ふたりの心模様を踏まえ、しみじみと「今、本当にお幸せですね・・・」これはある意味、ねぎらう感情も含まれる「お幸せですね」かもしれない。この演じ分けがスタッフに難しいときは、経験を積み重ねてきた店主の出番になる。
ところで、人は言われてはじめて自分の気持ちを確認できることも多い。ただし、それは共感できる言葉であることが条件。誰が言うかより、なにを言うか。なにを言うかより、どんな気持ちで言うか。慣れた顧客であっても、おざなりな接客では伝わるまい。何を言うかは大切だが、どんな気持ちで言うかでお客様の心に届くかどうか、心が動くかどうかが決まる。
心が動く、そうか、私は今幸せなんだ、と自分の気持ちを確認できれば、指輪を見るたびにその時の記憶が感動と共によみがえるのではないか。
-
vol.
234なにを言うかより、どんな気持ち…
-
vol.
233スランプは成長のチャンス
-
vol.
232ひとりの顧客と深く関わる