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たかはしこうじのマーケティングスパイス

2024.05/vol.224

社員自慢

うちの社員向けに話して欲しい、と頼まれ出講した。社長は講演後に若手社員から質問が出ることを期待していたが、手を挙げたのは察しのいい役員だけ。お開き後、若手の悩みを聴いてほしい、と社長に頼まれ会議室に向かった。
机をはさみ前にかけたのは中途入社2年目の30代男性Aさん。あと2人候補がいたが、先約があり日を改めることに。詳しくは控えるが、この会社は複数の店を持つ中小サービス業。彼は上司の下で地域の支店をまとめる仕事をしていた。大手企業の管理部門から転職して2年のAさん。オフレコで上司への不満を話し始めた。しばらく聴いていると、彼はガス抜きが目的ではなく、この2年で変化した自分自身の振り返りをしているのだと気づいた。
Aさんいわく、前職では上司の指示に従えばよかったが、今は上司の指示が突然変わることもあり、途中で確認しないと仕事にならない。気づいたら自分で修正しないと後で責任を負わされる。彼の上司は自分と同じように大手企業に籍をおき、総務の仕事をしていた方だという。そして、この会社に転職し役職を兼務、仕事が増えて手がまわらず、そのしわ寄せが自分にきているのではないかと続けた。少し間をおいて、今は慣れましたし、2年間ずっと教育されているような厳しさで、おかげで鍛えられました、とも。
なんだか、自分勝手で世話の焼ける上司の下で悪戦苦闘するAさんが思い浮かぶ一方で、上司の機嫌をそこなわずにフォローするAさんの人のよさや責任感の強さも伝わってきた。そして、前職では発揮されなかったであろう個性がここで輝き出したのではないかとも思えた。
Aさんの前に座っていた私は、語りながら変化する彼の表情に気づいた。
始めは困った表情、次に困惑に加え少し苛つ表情、終盤は清々した表情が漂っていた。中途入社の場合、前職で上下関係を経験しているだけに上司との相性に敏感だと思う。そして力量を見抜くのも早い。Aさんのように、上司をフォローすることで成長するタイプは稀だが、彼のような人財が1人でもいれば社内の雰囲気は変わる。
私は若手の悩みを聴いてほしいと会議室に通されたが、部屋を出る時、社長には別な意図があったと気づいた。それは、社員自慢。うちの若手が育っていますよ、と自慢したかったのではないかと。

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