2021.03/vol.186
お客様の言動に素直に従えばよい
西日本に出張した時に、複数の店主から「左側通行」の戦術を教えられた。観ると確かに、平日の朝なら駅からオフィスに向かって左側を歩く人が多い。帰りは向きが逆になるが、やはり左側を歩いて駅に向かう。すると、早朝の買い物客を重視するコンビニなら、駅からオフィスに向かって左側に店舗を構えたほうが通行人をキャッチしやすいことになる。
それでは、衣類やアクセサリーなどの買回り品はどうか。これらは平日早朝に買う人は少なく、店に寄るなら帰り道だ。すると駅に向かって左側の店が有利になる。また、休日の場合は平日とは逆に往路で買い物可能なので、最寄りの駅や駐車場から見て左側の店が優位になりそうだ。もちろん実測してみれば店舗によって差が出ると思うが、地域のお客様の言動に従う戦術は的を射ている。
さて、弊社のお付合い先にもお客様の言動に従う戦術で、うまくいっている和洋菓子店がある。キーワードは「予算」だ。ギフト需要に応えようと考えた店主は、当初、菓子箱に凝るなどラッピング技術を磨いていた。しかし、経費と手間がかかる割に数字はそれほど伸びなかった。そこで、手土産を探す場面で何度となく繰返されてきた「ご予算は」「ご自宅用ですか贈り物ですか」というやり取りを振り返り、お客様の言動に素直に従うギフトアイテムを増やすことにした。
先ずギフトに関するお客様の声を用途と予算で分けてみると、自宅用なら1,000円以下、手土産なら2,000円から3,000円、熨斗を掛けるなら3,000円や5,000円だった。すると、ギフト全体の価格帯は1,000円~5,000円だから、お客様がギフト売り場を見た時に感じる真ん中の価格は2,200円程度(相乗平均)になる。この価格より下のアイテムを増やせば、お客様の目には安くて品ぞろえ豊富なギフト売り場にうつると考えた店主は、既存商品の組み合わせを工夫し2,000円のギフトアイテムを2倍に増やした。すると9月から1月のギフト売場の坪当たり売上が前年同期比1.8倍になった。
今日は左側通行や予算の話をしたが、あなたの店や地域には、なにげなく繰返されているお客様の言動はないだろうか。その中には富をもたらすヒントが隠されているかもしれない。「そういえば」と浮かんだことがあれば、見逃す手はない。早速、素直に従う戦術を考えてみよう。
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